住宅ローンと抵当権について

住宅ローンを借入するときは、購入するマイホームに借入をした金融機関を担保権者として抵当権を設定するのが一般的です。

万が一、借主が住宅ローンの返済を滞納したときは、担保物件を競売にかけ、現金化して貸したお金を回収します。

ここでは、一般的にはあまり知られていない「根抵当権」についても「抵当権」と併せて解説しましょう。


抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンなどを借入するときに、購入する土地や建物に金融機関が「担保」として設定する権利のことです。万が一、住宅ローンの返済が滞納する事故が発生した場合には、担保物件を売却して貸したお金を回収します。

抵当権者である金融機関などは、貸したお金が返済されない場合、裁判所に申し立てて不動産を競売にかけます。いわゆる、「抵当権の実行」です。通常、3〜6ヶ月ほど住宅ローンの支払いを滞納すると、金融機関から支払いの督促状が届き、それでも滞納が続く場合には競売が実行されるという流れになります。

抵当権者は、一般の債権者や自己の抵当権を設定した後に担保権を持っている債権者よりも、優先的に弁済を受けられます。そのため、住宅ローンを貸し付ける金融機関は、抵当権や根抵当権などの担保権を設定するのが一般的です。

不動産に抵当権を設定するときは、法務局で「抵当権の設定登記」を行います。住宅ローンの借主が登記手続きを行いますが、抵当権の設定登記には専門的な知識が必要なため、金融機関から紹介された司法書士に依頼する場合がほとんどです。

抵当権の設定方法

抵当権の設定方法は以下の流れになります。

  1. 住宅ローン契約を結ぶ
  2. 抵当権設定契約を結ぶ
  3. 必要書類を揃える
  4. 抵当権設定登記申請をする
  5. 登記事項証明書を取得し、金融機関に提出する

住宅ローン契約を金融機関と借主の間で締結した後、住宅ローン契約に基づいて抵当権設定契約を締結します。抵当権設定契約書、司法書士への委任状、印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)などの必要書類を用意して、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局の窓口や郵送で抵当権設定登記申請を行います。登記手続きが完了したら法務局で登記事項証明書を取得し、金融機関に提出をしたら完了です。

「抵当権」と「根抵当権」

通常、住宅ローンを借入するときには、根抵当権ではなく抵当権が設定されることが一般的です。抵当権と似たような担保権としては根抵当権がありますが、抵当権とは内容に違いがあります。

根抵当権とは、企業が事業資金などの融資を受けるときに、企業や経営者が所有する不動産などに設定する担保権のことです。根抵当権を設定しておくと、企業が金融機関から事業資金を調達したいときに、その都度、登記をする必要がありません。不動産の担保価値に見合った貸出金額の上限を決めて、その範囲内ならば何度もお金を借りたり返済したりすることが可能です。

一般の人が根抵当権を設定する場合としては、リバースモーゲージなどがあげられます。リバースモーゲージとは、所有する不動産を担保に借り入れをする制度のことです。借主は利息分のみを毎月支払い、死亡したときに担保として設定した不動産を売却して借りたお金を全額返済します。

借入金の返済を怠ると「期限の利益」を喪失

住宅ローンの返済を滞納すると、「期限の利益」を喪失してしまいます。期限の利益とは、一定の期限が到来するまで支払いをしなくてもよいという債務者の利益のことです

しかし住宅ローンの返済を怠り一定期間が過ぎると、金融機関は期限の利益の喪失に関する通知書を送付し、「一括返済をするように」と迫ってきます。つまり「期限の利益の喪失」とは「将来支払えばよかったお金を、今すぐに支払わなければならなくなった」ということです。

期限の利益を喪失した債務者は、「一括返済をするように」と金融機関から命じられますが、月々の支払いができない状態では一括返済できるわけがありません。すると金融機関は担保となっている物件の競売を裁判所に申し立て、売却したお金で貸付金を回収することになります。しかし競売で売却をしても、市場価格の6~7割程度でしか売れない可能性が高く、オーバーローンの場合金融機関は全額を回収することはできません。残債の金額によっては、任意売却のほうが貸したお金を多く回収できる可能性もあるため、交渉次第で任意売却に同意してくれる場合もあります。

任意売却をするには抵当権の抹消が必要

抵当権の抹消とは、住宅ローンを借りた際に設定された抵当権を解除することです。

通常は「住宅ローンを全額返済できた時」のみ抵当権を抹消できます。なので抵当権が設定されている間は、所有者といえど抵当権者の承諾なしで第三者に売却することはできません。しかし経済事情が悪化するなどの理由で、住宅ローンを返済中(抵当権が付いたままの状態)に売却せざるを得ない人は多く存在します。とはいえ、抵当権付きの不動産は、いつ差し押さえられるか分からないため、購入する人は極めて少ないのがデメリットです。

そこで検討したいのが任意売却による不動産の売却です。任意売却は抵当権付きの不動産を売買できる方法であり、抵当権者である金融機関などに交渉をして抵当権の抹消を承諾してもらいます。金融機関との交渉は任意売却業者などの専門家を介することが鉄則です。

登記した順位により優先度が決まる

抵当権は、一つの不動産に対し複数設定することができるものです。

一番先に設定されたものは第一抵当権、二番目に設定されたものは第二抵当権、三番目に設定されたものは第三抵当権と続いていきます。登記した順位が早いほど優先度が決まるという特徴です。万が一、住宅ローンを返済できなくなり担保不動産を売却した場合、代金は第一抵当権者→第二抵当者の順で返済に充当されることになります。

たとえば、不動産を売却して得た代金が5,000万円の場合、第一抵当権者と第二抵当権者が3,000万円ずつの貸付金があったとします。この場合、第一抵当権者は3,000万円まるまる返済してもらえますが、第二抵当権者は2,000万円しか返してもらえません。

したがって、後順位になるほど貸付金はもらえない可能性が高まり、登記すらしていないただの債権者は返済してもらえる確率が少ないのが実情です。なお、債務者が第一抵当権者に借りたお金を全額返済した場合は自動的に消滅し、二番抵当権者が一番抵当権者へと繰り上がります。

先取特権は抵当権より優先される

先取特権(さきどりとっけん)とは、法律で定められた特殊な債権について、債務者の財産や不動産などから優先的に弁済を受けられる権利のことです。この権利は、担保物権として強く保護されています。民法では「一般先取特権」「動産先取特権」「不動産先取特権」の3種類に分けられております。

主な内容は以下の通りです。

  • 一般先取特権(共有部分の水道光熱費や修繕費・従業員への未払い給料・葬式費用・日用品の購入など)
  • 動産先取特権(アパートなどの家賃収入・宿泊料金・アクセサリーなど商品の売却代金など)
  • 不動産先取特権(不動産の保存・工事・売買などで発生した費用)

たとえば、雇人の最後の6ヵ月分の給料は雇主の総財産に対して、優先弁済の権利があるとされています。また、請負人等がした不動産工事の費用や不動産売買の対価およびその利息も、その不動産に対して同じく優先的に弁済されると規定されています。

抵当権に関する対応は、任意売却業者への依頼が最善

住宅ローンの返済や任意売却の実行に際して、設定された抵当権の解除などは必至です。とはいえ、一般的に債務者が自分自身で全て対応を手掛けるのは事実上難しいと言えます。

任意売却協会(または最寄りの任意売却業者など)は、任意売却のみならず住宅ローンの返済や借金問題などのその他法律関係のご相談に幅広く対応しています。お困りの場合は、是非24時間いつでもご連絡頂ければ、無料で対応させて頂きます。