任意売却と自己破産
住宅ローンの滞納が続くと、自己破産の4文字が浮かぶ方も少なくありません。
住宅ローンは数千万円など多額の残債を抱えている場合が多いです。
ケースによっては自己破産をするしかない状況も考えられます。
ただし、任意売却をすることによって、自己破産を免れる場合もあります。
任意売却後も残債が残る場合はある
任意売却とは一般的な不動産の売却とは異なり、売却をするにはローンを借り入れた金湯機関や保証会社の同意を得ることが必要です。なので任意売却をするにあたり、いずれ金融機関などと交渉をしなくてはなりません。 また一般的に競売になると、不動産の売却価格は市場の6~7割程度にしかならない場合がほとんどです。しかし任意売却だと、市場価値に近い金額で売れる可能性が高いとされています。少しでも多く回収するために、金融機関も任意売却に応じてくれるケースはよくみられます。 ただし、いくら市場価格に近い金額で売れる可能性が高いといっても、ローンの残債が残るケースは少なくありません。 「ローンの返済が始まって間もない」「建物の資産価値が下がったため売却価格が低くなる」などの場合は、いわゆる「オーバーローン」(売却価格よりローンの残債の方が多いケースのこと)の状態になります。そのためオーバーローンの場合だと、任意売却後も残債が残ってしまう場合があります。 任意売却をして住宅ローンの残債を大幅に減らした後も、残債がある場合は自己破産をしない限り、ローンの返済は続きます。 任意売却後の返済額は数万円程度の返済が多いようです。通常は金融機関との交渉で決まります。一般的に月額5,000円~30,000円程度が相場となっているようです。 残債務については、債務者の経済事情を債権者へ説明したうえで返済額を決定します。この交渉については任意売却業者など、交渉事に慣れているプロの専門家の方が、債務者の希望や経済事情にあった返済額で話をまとめてくれるケースが多いようです。現実的に債務者が返済できる金額でないと、再度滞納する恐れがあり得ます。 任意売却をしても残債が多く残った場合は、数十年など長期間に渡って払い続けることも少なくありません。 任意売却後に金融機関と交渉した後に決まる「毎月返済する金額」は、数万円など少ない場合が多いため、残債が減るスピードが遅いからです。 収入が比較的に高く安定した職に就いている人ならば、残債を早めに返済することも可能ですが、そうではない方々にとっては話がまた別です。 特にご年配の方々にとっては、生きているうちに残債を返済しきれない場合には、彼らの相続人となる子どもや孫がローンを受け継ぐことになりかねません。 なので、もし任意売却をしてもローンの残債が多過ぎるならば、最終手段として自己破産をするのもひとつの方法です。 自己破産をすれば、住宅ローン以外の借金もすべて支払わなくて済むようになります。 ただし、親や兄弟などが連帯保証人になっている場合は、債務者が自己破産をすると代わりに残債を支払わなければなりません。債務者本人は借金から逃れられますが、連帯保証人は保証人から外れない限り、支払う義務があるのです。このように連帯保証人に迷惑をかける事態が発生します。 また、長期での支払いになることが多いため、債務者が死亡した場合は、残債を相続人が受け継ぐことになります。したがって、資産がないのに残債が多すぎるときには、相続人は相続放棄も視野に入れて相続するかどうかを考えることが必要です。相続放棄をすれば残債を含む借金全てを支払う義務から逃れられます。 自己破産を深刻に考えすぎる人は多いですが、日常生活には差し支えません。 例えば厚生年金や国民年金などの年金は、差し押さえが禁止されているので、換価処分の対象となりません。したがって、自己破産をしても通常通り、受け取ることができます。 ただし、自己破産をすると、「ブラックリストに登録される」「職業や資格に制限がかかる」などのデメリットはあります。ブラックリストに登録されるとクレジットカードは使えないので、現金のみで買い物をしなければなりません。また、「宅建士」「生命保険外交員」などの職業は一定期間、職務に就けなくなり、何より自己破産をしても全ての債権が解消されるとは限りません。 自己破産の手続きをした後は、裁判所から免責の許可が下りた時点で借金がなくなります。 不動産を所有している場合の自己破産手続きでは、破産管財人(管財人)が選任される管財事件が原則です。 自己破産は申立人が支払い不能の状態であるかなどを裁判所が確認し、破産手続きの開始を決定します。その際に裁判所に納める予納金の額は、裁判所や債務額によって異なりますが、東京地裁の場合は最低額が20万円です。 マイホームを処分して債権者に配当する手続きには時間がかかるため、最終的な免責を受けて債務整理が終わるまでは長期間を要します。 自己破産をする際に、「免責不許可事由」がある場合には、申し立てをしても認められない可能性があります。 免責不許可事由とは、借金の免責(返済義務を免れること)が認められない借金の原因や、不当な行為を指しています。該当するケースは以下の通りです。 したがって、ギャンブルや過度のショッピングなどで多額の借金をした場合、また詐術などを用いた結果による場合は、自己破産しようとしてもスムーズには認められないこともあり得ます。 自己破産の手続きをして裁判所による免責が決定すれば、原則として全ての債務の支払い義務がなくなります。 ただし、税金などの公租公課や損害賠償金など、一部の債務については免責を得た後も支払うことが必要です。これらの免責されない債務は「非免責債権」といわれており、支払い義務が消滅することはありません。 非免責債権の一覧は以下の通りです。 したがって、離婚した場合の元配偶者への生活費や子供への養育費、不法行為に基づく被害者への損害賠償などは、自己破産をしても支払うことになります。 自己破産を1度経験したにも関わらず、再び自己破産をする状況に陥ってしまう人も少なくありません。 法律上は自己破産に回数制限はありません。しかし7年以内に再び自己破産を申立てた場合には、原則免責は許可してもらえないとされています。 もちろん、裁判所が免責を許可する可能性はあります。ですが、二度目の破産となるだけに審査は以前よりも厳しくなるのが実情です。 自己破産が二度目になると「管財事件」となる可能性が高くなるため、手続きが煩雑になり破産手続きが終了するまでの期間が長くなります。 自己破産をすると、約5~10年間は金融機関からの融資を受けることが難しくなります。 信用情報機関に事故情報が登録されている間は、いわゆる「ブラックリスト」に載っている状態のため、経済的な信用力がありません。したがって、一般的に金融機関の審査には通らないのです。(事故情報は一定期間が経過すると消去されるので、新たに融資を受けることが可能です。とはいえ、以前、自己破産をしたときに免責の対象となった会社は、半永久的に「ブラック」として取り扱いを受けます。) 月数万円程度の返済額になる場合が多い
数十年にわたって残債を払い続けることも
場合によっては自己破産を検討
自己破産をしても日常生活には差し支えない
自己破産の申し立ては裁判所が可否判断を下す
ギャンブルなどの場合は認められないことも
損害賠償金や税金などは支払い義務が残る
再び自己破産をするときは裁判所の審査が厳しくなる
自己破産後、最低5年間は金融機関から借入は不可能